更新日:2014年5月1日
風薫る5月、阿古谷の里へ異形の大男が訪れました。ボサボサ頭に古びたねずみ色の衣。傍らには60歳を超えた男が付き添うこの僧こそ、微笑仏の作者「木喰五行明満上人」だったのです。五穀を断ち火食をしない木喰戒を生涯守った、この古義真言宗の僧は、飢饉や天災に苦しむ民衆の救済を願い、日本各地に写経や仏像を納めてきたのです。この時上人はすでに90歳。助手青柳清右衛門がいたとはいえ、町域に滞在した約3カ月の間に、3日で1躯の造仏スピードは驚異です。
町内現存の木喰仏26躯(毘沙門堂7躯、天乳寺3躯、東光寺14躯、個人2躯、それぞれ所有)は昭和26年粟野頼之祐氏に所在を発見され、平成11年県指定文化財となりました。町内最古の木喰仏は文化4(1807)年3月26日(新暦5月3日)銘の毘沙門堂の像2躯です。木喰さんの心と、今も変わらぬ微笑みに癒されてみませんか。(写真:東光寺の木喰仏)
《読み方》
異形=いぎょう、傍ら=かたわら、微笑仏=みしょうぶつ、木喰五行明満上人=もくじきごぎょうみょうまんしょうにん、五穀=ごこく、火食=かしょく、木喰戒=もくじきかい、古義真言宗=こぎしんごんしゅう、青柳清右衛門=あおやなぎ せいえもん、造仏=ぞうぶつ、木喰仏=もくじきぶつ、毘沙門堂=びしゃもんどう、天乳寺=てんにゅうじ、東光寺=とうこうじ、粟野頼之祐=あわのらいのすけ