11月26日(土曜日)、中央公民館視聴覚ホールで「第20回特別支援教育公開講座」を教育委員会主催で開催しました。
この公開講座は、平成19年度から猪名川町教育委員会主催で年2回開催しています。本公開講座は、(1) 発達障がいや特別支援教育への理解を深めること、(2) 学校・園や地域・家庭で子どもたち一人一人に応じた支援ができるようになること、を目指しています。
今回は、NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)代表で、キャリアコンサルタント、ロゴセラピストの広野ゆいさんを講師としてお招きし、「発達障害と発達凸凹 ~当事者からのメッセージ~」と題して講演していただきました。広野さんは、子ども時代から遅刻、忘れ物、片付けができない、周りと合わせられないなどの特性があり、忘れ物の女王、遅刻の帝王などと呼ばれて学生時代を過ごされたそうです。専業主婦だった28歳でうつ、30歳のときADHDと診断されました。その後、セルフヘルプグループを立ち上げられたり、当事者の立場でキャリアカウンセリングを行ったり、企業や専門職向けの研修を通して大人の発達障害の理解を促し、働きやすい職場づくりの支援をされています。
子どもの社会的自立に向けて期待と不安を抱かれている保護者や、子どもの将来の進路選択に向けてキャリア形成に力を注いでいる先生・保育士、ご家庭を見守り支援したいと考えてくださっている民生委員・児童委員など地域の方など、町内外から約120名が参加しました。
広野さんは発達の凸凹は誰にでもあり、発達障害はその凸凹が大きいか小さいかの違いだけの話で、その凸凹が悪いのかどうかは環境によるものだとおっしゃいました。できないことではなく、できることに視点を当てる「ストレングス視点」を持つことが大事だと教えてくださいました。
また、自尊心を育てるのは難しいことですが、広野さんは、「ありのままの自分を認めてくれる人の存在を得たことで、自分は生きていてもいいんだという自己肯定感に変わった。まずは、否定されない、安心できる場所の確保が大事。」とおっしゃいました。
広野さんには、発達障害の子どもたちが社会で生きるためのキャリア形成に必要なこと、大人の発達障害の現状など、私たちが共通理解しておくべきことをたくさん教えていただきました。
参加者の感想の一部を紹介します。
・当事者の方のお話はとても具体的でたいへんわかりやすかった。「発達障害の子や人はさぼったり、やる気がないと感じられたりするけれど、本当はすごく頑張っている。もともとストレスがかかっているから、昼頃にはそれ以上我慢できない状態になってしまうのだ。」など当事者でないとわからないことを教えていただけた。「やりたくてもできない」気持ちに寄り添いながら、自尊心を高められるように支援していきたい。
・発達障害があっても充実した人生を生きていけるという確信ある言葉が胸に響いた。我が子の将来が不安だったが、充実した人生を歩めるように、親として楽しみながら挑戦したい。そして、自分もいつか誰かの役に立ちたいと思った。
・「自立」の概念が「目からうろこ」だった。自分の力で選択できる力をつけて社会で生きることが「自立」。否定されない安全・安心な場所で過ごすことで、受け入れられる体験と受け入れる体験を積むことが基盤づくりとして大事であり、それにより「自分」というものをしっかり持つことができる。
・発達障害の子が大人になるまでの育ちという広い観点で見ることができる内容で、気持ちの整理ができた。
・「合理的配慮」は障害のある子ども(人)のためだけでなく、誰もが生きやすい社会にするためのものだという広野さんの考えに同感する。自分自身も貢献していきたい。
・身近なところにもこだわりの強い人や自尊感情の特に低い人がいて協力しない人達だと捉えていたが、ただ単にわがままだと済ませるのではなく、その人達が取り組みやすい方法を考えていきたい。
予測の難しいこれからの時代を生きる子どもたちが、新しい環境で不適応を起こさずに、自分の能力をしっかり発揮し、いきいきと学び、働けるように、私たち大人が学び続けていきたいと思います。
これからも猪名川町で一緒に学ぶ機会を作りたいと思います。どうぞご参加ください。