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現在の場所

第153話「大の月と小の月」

町内には国登録有形文化財が2邸あります。そのうち上野にある静思館(旧冨田家住宅)では、おひな祭りやコンサートなどが開かれ、訪れたことがある人も多いのではないでしょうか。この屋敷は明治から昭和にかけて世界的古美術商として活躍された冨田熊作氏が昭和7(1932)年から3年の歳月と巨費をかけて建てた数寄屋()建築です。

さて、豪壮な主屋()の中に入ると、台所に面して茶の間が2室続いています。その広い方の10 畳の間の長押()に、片面に「大」、裏面に「小」と書かれた丸い板が掛かっています。これはその月が日数の多い「大の月」か少ない「小の月」かを表し、誰もが一目でわかるようにしたものです。

現在の太陽暦では月の大小は固定されていますが、明治5(1872)年までは月の満ち欠けに合わせた太陰()暦(旧暦)が使われていて、1カ月が30 日の月を「大の月」、29 日の月を「小の月」とよんでいたのです。

太陰暦では数年に1度「閏月()」が必要で、大小の月の並び方も不定期でした。月末は支払いや集金などがあったので、「大」か「小」かは大切なことでした。そのためこのような「大小額」や「大小暦」が作られていたのです。旧冨田家住宅が建てられた頃は太陽暦が普及して久しいですが、農作業などに便利な旧暦に馴染んでいる人も多く、装飾を兼ねて掛けられていたのかも知れません。

このように、静思館にはちょっとしたところに当時の生活などを偲ばせるものがあります。台所の棚の上には布袋()像(下写真)が並んでいて、これは福を求めて伏見稲荷で毎年買い求めたものですが、その中には中国製の像が混じっています。どの像か一度探してみてください。

 

《読み方》
数寄屋=すきや、主屋=しゅおく、長押=なげし、太陰=たいいん、閏月=うるうづき、布袋=ほてい

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