「里人は 子もりがらすの 入相の鐘を合図に 追々と入る」これは多田八景の一つ「大井晩鐘」とうたわれた東光寺の鐘の情景です。日が暮れてカラスはねぐらに向かい、鐘の音と共に農作業を終え、家路をたどる人々の姿が目に浮かびます。
「多田八景」とは150年前頃に、有名な近江八景になぞらえて猪名川周辺の名勝を選定したものです。「三井晩鐘」が「大井晩鐘」とされたのをはじめ、「唐崎夜雨」が「銀山夜雨」に、「堅田落雁」が「民田落雁」に代えられています。
町域ではこの3カ所ですが、三田に「蓮花寺秋月」が、川西市域には「立川夕照」「多田院帰帆」「平野暮雪」が選定されています。最後のひとつ「四つ辻清嵐」は、数カ所の推定地があるため、選者とともに不明です。
それぞれには冒頭のような歌が添えられ、当時の人々の生活や暮らしの中に溶け込んだ風景を感じることができます。(写真:大井晩鐘とうたわれた東光寺の鐘)